鬼が往く
鬼の如く
紗智の手で、銀二はすぐに歌舞伎町の雑居ビルにあるという診療所に運び込まれた。

打撲、骨折は数知れず。

ここまでの苦痛を与えられて、よく精神が正常を保っていられたとは、診療所女医の田中 美奈(たなか みな)の弁。

命に別状はないものの、絶対安静なのは言うまでもない。

だが、銀二にはいい薬だったかもしれないと紗智は思う。

これまで関西明石組に、たった1人で無謀な喧嘩を売ってきた銀二だが、これで少しは懲りただろう。

相手は、一介の喧嘩屋如きの力でどうにかなる存在ではなかったのだ。

東京は明石組に牛耳られてしまうが、それは紗智や巽、倉本といった警察が少しずつ奪還すればいい。

今は銀二を、休ませる必要があった。

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