秘書と野獣
あんぐりと開いた口が塞がらないとはまさにこのことだ。
既に莉緒に証人になってもらってる?!
一体いつ、どこで!
だって、社長のことを聞かれたときにはそんな素振りは微塵も…!
そこまで考えてハッとする。
『おねえちゃん、おねえちゃんの人生だから私がどうこう言うべきじゃないのはわかってるけどさ。もう少し冷静になったら見えてくることもあるんじゃないの?』
『はぁ…わかったよ。とにかく後のことは全部引き受けるけど、…まぁとにかく頑張ってとしか言いようがないね』
まさか、あの時には既に…?
十日ほど前、急ではあったけれど、莉緒に家を出た後の処理をお願いするために頭を下げに行った。夜逃げ同然の私の行動に驚くと共に、彼女は心底呆れているようだった。
それも当然だとその時はそれ以上深く考えなかったけれど…もしその時点で既に社長から証人を求められていたのだとすれば、私の行動はとんでもなくバカバカしく滑稽に見えたに違いない。
「なーにを百面相してんのか知らねーけど。出すのか出さねーのかどっちなんだよ」