恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
そして、美波は真面目な声で

「ぴよがあんまりうるさいから、
一昨日そのまま飲みに行って…修一君の事話しちゃった。
良かったかな?」と心配そうに聞いてくる、

「いいよ。もちろん。
きっと、直ぐに耳に入るし…
美波が話してくれた方がきっと、いい。」とニッコリ返す。

「ぴよ…いや、リュウ先生すごく悲しそうな顔をしてた。
あんな顔は昔、見たことがある気がして、
中身はあんまり変わってないのかもって、思ったよ。」

そうか、
よく、非常階段にもたれて、悲しい顔をしてたかも、と昔の事を思い出した。

彼は、昔は繊細で、きっと泣き虫で、私たちは似た者同士だったのだ。

美波は続けて
「ナナコ、そろそろ帰っておいで
…もう、前に進まなきゃ。
修一 君もきっとそれを望んでいる。私はそう思うよ。」
と静かに言って、ぎゅううっと私を抱きしめた。

…あったかいよ、美波。
私もそう思ってる。

でも。私は、看護師として働けるのかな、
…心も身体もついていけるんだろうか?

返事をしない私に
「ナナコ、大丈夫だよ。
リュウ先生がきっとそばにいてくれる。」

「はいいっ!?美波がいてくれるんじゃないの?」と私は口をへの字にまげる。

「だああって、私は忙しいしいっ。
リュウ先生にお任せっ!」と大きな笑顔だ。

西島先生まで
「そーだ!お任せして早く帰ってこい。」とニコニコしている。

馬、馬鹿じゃないの?

「お任せ!お任せ!」
「 お任せしろ」

という笑い声にナースステイションから追い出される。

やれやれ。
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