恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
ぼんやり考えながら桜の木を見上げていると、
急に子供の泣き声と保母さんの悲鳴が聞こえた。

咄嗟に駆け寄ると後頭部から出血している男の子と、
「しゅうちゃん!」「しゅうちゃん!」と慌てている保母さん。

桜の木に登って落ちたのかな?

保母さんのその慌てっぷりは、きっと新人さんなのだろう。

保母さんに少し笑いかけてから、

私は男の子にそっと声をかける。

「しゅうちゃん、痛かったね」
「痛くないもん」としゅうちゃんは泣いている。

「ちょっと見せてね」
とゆっくり髪をかき分けてハンカチで押さえてから確認すると3センチ位の浅い傷。

派手に出血したけど、重症って訳じゃなさそうだ。

「ありゃりゃ、
これは病院に行って先生に見せてあげないと…
強い男の子だけにできる『カッコイイしるし』ができてるよ。
病院の先生に見せてあげるときっとすごうく驚くよ。」とにっこり笑いかけてみる。

「本当に?」としゅうちゃん

「本当、本当」と駆けつけた年配の保母さんにも相槌をうたせる。

そして、

「タクシーでかかりつけの医師の所に行くと良いですよ。
傷は縫わないといけないし、
意識ははっきりしてるけど、後頭部を打っているから
念のためCT検査とかしたほうがいいと思うし…」

と話すと、年配の保母さんは頷いてテキパキとタクシーの手配をしている。
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