あの日失った想い
郁麻は相変わらず顔を下に向けていた。


「あなたの身に起こったことはこれだ「………由佳里」




私の言葉を遮るように彼が入ってきた。




「どうして、こんなに苦しい。


途方もない。信じられる話ではないのに。



でも、心が落ち着かねぇ……」




「!」




彼が顔を上げた。とても弱々しい表情をしていた。




初めて見たんだ。あなたの弱いところを。



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