あの日失った想い
あの時、郁麻は寝ていたから私の声は届かなかっただろう。




あのことを人に話したのは初めてだった。




家族にも仁美にも話せなかった。




どうして郁麻に話したのだろう。いや、まぁ話したとは言えないがな。





「…佳里……由佳里!」



「…!あ、ごめん」





仁美が話しかけていることを忘れていた。




私としたことが、何のいうことを。




「で、なんだっけ?」




私が仁美から視線を外して言うと、彼女は呆れた顔をして答えた。

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