三月の雪は、きみの嘘
プロローグ
『あるところに、ウソばかりついている女の子がいました』


遠い昔のおぼろげな記憶の中にひそんでいる物語の一行目。

それはまるで、自分のことを言い表しているよう。


『ウソはいけないことだ』ってわかっている。


それでも口がつむぎだすウソの会話、ウソの笑顔が、だんだん本当の私を隠してしまっていた。

物語の先はいくら目をこらしても見えないまま、季節は水のようにさらさらと流れ、心を氷のように冷やしていく。


……だけどあの日、君に出逢えたから。


少しずつ覆っていた氷が砕け、溶けだす音を聞いたの。


君と読む、物語のその先。



そこにはどんな景色が広がっているのだろう。

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