王様と黒猫
その日は朝から雨が降っていた。

ここの所忙しく、過剰労働気味。それなのにさらに気が滅入るような冷たい雨に、俺は少し苛々していたのかも知れない。

あの呑気な黒猫シオン、でさえそんな気分を察知したのか、今日は俺には寄っても来なかった。


だから悪いのは自分。


そんな事は分かりきっていた。





「――――喧嘩、ですか? また、珍しい」

「うるさいぞ、ジェイク」


太陽が顔を見せないうちに一日が終わろうとしていた。朝からの雨は今だに止む気配は無い。

一日の騎士団の報告書を持ってきたジェイクは、いつもなら書類を置くとすぐに帰ってしまうのに。今日は何故かだらだらと居座っていた。

どうせ困り果てて頭を抱えている俺の事を面白がっているのだろう。こんな時のこいつは憎たらしいほど底意地が悪い。


「原因は何だったのですか?」


にやにやとそう笑いながらジェイクは長椅子に腰掛けた。偉そうなその態度が癪に障る。

しかし現状を打開するには、そんな事を考えている場合では無い事も確かだ。

相談……になるかどうかは分からないが、俺は事の顛末を説明する事にした。









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