王様と黒猫





彼女は猫によく似ている。

機嫌がいいときはごろごろと擦り寄ってくるが、何かのきっかけでふっと離れてゆく。懐いたかと思い手を伸ばすと鋭い爪で傷を付けられる。


だけど甘いものには弱い、そんな野良猫。








「ちょっと聞いてよ! ジェイク!!」

「こいつをどうにかしてくれ! ジェイク!!」


ここの所、毎日昼を過ぎると静かな執務室に響き渡る二人の怒号。少しぐらい声のトーンを落とせないかと問いかけたいが、この二人には無理な注文だろう。

しかし毎日毎日、よくもめる事があるものだ。そう思いながら飛び込んできた二人に目を向ける。


「この馬鹿陛下! 今日も会議放り出して黒猫と遊んでたのよ!」

「馬鹿とは何だ! 馬鹿とは! 不敬罪で捕らえるぞ!」

「馬鹿を馬鹿と呼んで何が不敬罪よ! 馬鹿アレックス!!」


はあ、と思わずため息が漏れてしまった。

恐れ多くも国王陛下を馬鹿呼ばわりするソフィアは、騎士団での同期だ。自分の師団にいた有能でよく気のつく彼女を、最近陛下の護衛に任命したのはこの私だ。しかし彼女の気性まで考慮しなかったのは失敗だった。

そのお陰で、頭を抱えながら二人の仲裁を毎日する事になってしまった。




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