身代わりペット
会社帰り。

課長に突然、「遊園地に行かないか?」って言われた時はビックリした。

どうやら私に拒否権はなかったみたいで、有無を言わさず連れて来られた。

来てすぐ位の時はライトアップにはまだちょっと時間が早かったみたいで、ジェットコースターに乗ったりコーヒーカップに乗ったりして時間を潰した。

嫌がる私の意見を無視してお化け屋敷に連れて行かれたから、仕返しに嫌がる課長を無視してメリーゴーランドに引っ張り込んで一緒に乗ってやった。

ライトアップが始まる頃には双方のライフポイントがすり減っていたけど、これを見たらあっと言う間に回復した。

「この遊園地、小さい頃によく家族で来てましたけど、こんなライトアップなかったです」

当時、こんな洒落たショーアップはなかった。

しかも冬じゃなく初夏のライトアップなんて珍しい。

そもそもここは大人が楽しめる様な、某世界的に有名な遊園地の様に大きくはないし、アトラクションだって少なく子供向け。

せいぜい小学生くらいまでが楽しめる様な、そんなこじんまりとした遊園地だった。(でもお化け屋敷は怖かった)

「俺もよく小さい頃に家族と来たな。……ここ、もうじき閉園するんだ」

「え……」

閉園、と言う言葉に驚き、言葉に詰まる。

「そんな……」

「惜しいよな。とても良い所なのに」

さっきまで楽しかったのに、一瞬で切なくなってしまった。

それは課長も同じなのか、表情は曇っている。

「閉園前の一週間限定でライトアップされるって前から知ってはいたんだけど、何かと忙しくて結局最終日になってしまって。でも、来れただけ良かった」

「そうだったんですね……」

課長の話を聞いて、ここで出来た思い出が頭の中を駆け巡る。

風船が欲しくて泣いた事や、足が疲れてお父さんに肩車をしてもらった事。誕生日には大きなマスコットキャラクターのぬいぐるみを買ってもらって、ケーキを食べた事。

色んな事がいっぱいあった。

< 135 / 193 >

この作品をシェア

pagetop