身代わりペット
「お金貸して、とかの電話かな……」

「誰に貸すの?」

横からニュッと顔が現れ、私はわぁっ!と小さく叫んだ。

慌てて見ていた携帯のディスプレイを閉じる。

和矢を表示させていたの、見られたかな?

「お金なんて貸したって良い事ないよ。はい、カフェオレ」

自分のコーヒーと私のカフェオレを買って戻って来た千歳が向かい側の席に座り、フーッフーッと冷ましている。

「ありがとう。いや、貸しはしないよ。そんなお金ないし」

「うん、それが良いよ。友達だったら尚更。それがトラブルの元になったりするしね」

友達……。

良かった。和矢の表示は見られてなかったみたい。

ホッと胸を撫で下ろしたのもつかの間、

「んで?なんであのクズ男の呼び出し画面なんて見てたの?」

と言う千歳の問いかけに、ギクッとした。

……やっぱり見られてた。

「へ?別に何も?ただ、アドレス消し忘れてたのに気が付いてそれで……」

咄嗟の事に上手く良い訳が見付からず、少し苦しい言い訳になった。

「ふ~ん。じゃあ今ここで消しなよ」

「え!?今!?」

「うん。今。あのクズ野郎の痕跡を全部」

「……分かった」

妙に威圧感のある言い方に私は言う通りスマホを取り出し、千歳の目の前でアドレスと着信履歴、発信履歴、メッセージのやり取り、和矢の全てを消した。

「これで良い?」

千歳が、差し出した画面をのぞき込む。

「……うん。まあ、番号消したって覚えているでしょうけど?絶対に電話に出るんじゃないわよ?」

「はい……」

私の返事に少し納得していない様子の千歳だったけど、それ以上は何も言って来なかった。
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