身代わりペット
「バッグ持つよ」

そう言って淳一さんが手を差し出してくれたので、私は素直にありがとうございますと言って肩にかけたバッグを手渡した。

ゆっくり、手を繋ぎながら私の歩幅に合わせて歩き出す。

「今日はいい天気だな。散歩日和だ」

空を見上げながら淳一さんが呟く。

「そうですね」

確かに、今日はすごく良い天気。

「……あの」

「うん?」

「ありがとうございます。迎えに来てくれて」

「うん。どういたしまして」

雲一つない青空と楽しそうな淳一さんを見ていたら、セールに行きそびれたなんて小さい事をネチネチ悔やんでいる自分がちっぽけに思えた。

「あ……」

私はお腹を押さえて立ち止まる。

「ん?どうした?お腹、痛いのか?」

淳一さんが心配そうに私の顔を覗き込む。

「動いた……」

「へ?」

「今、動きました!ここっ!」

お腹の下部分を指さすと、本当か!?と淳一さんが指さした場所を触る。

「……何も感じないぞ?」

「動くの止まりました」

「そっかぁぁぁぁぁぁ」

ガクリと肩を落とし、お腹から手を離す。

「また動きますよ……あ、ホラ、また」

「どれ!?」

今度はお腹全体をペタペタ触ってみるけど、やっぱり淳一さんが触り始めると動くのを止めてしまう。

「……ドンマイ☆」

グッ!と私が親指を立てると、恨めしそうにジッと私を見て、トボトボ歩き始めた。

「え、そんなに?」

そんなにガッカリするものなの?

先を歩いていた淳一さんがクルっと方向転換して私の元へ戻って来る。

「ん」

手を差し出されたので、その手を掴握ってまた歩き出した。

「その内この子も慣れてくれますよ」

「ん……」

ちょっとイジけた淳一さんが可愛くて、フフと笑う。

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