身代わりペット
プハーッと一息ついて思った事を口にした。

「……でも、良いね」

「なにが?」

「ケンさんに愛されてて」

「まあね」

千歳は遠慮なしにフフンと鼻を鳴らした。

「羨ましいよ。ウチらだったら多分そこで別れてたと思う。てか、私がケンさんの立場だったかな」

「紗月……」

自分で言ってて悲しくなって来た。

「よし!明日は休みだし、今日はとことん飲むぞ!千歳にも付き合ってもらうからね!おにいさーん!焼酎お湯割り!それと唐揚げ!」

「喜んでーー!!」

店員さんのよく通る声が気持ちいい。

「分かった。分かったから、もうちょっとペース落としなよ」

「だーいじょうぶ、大丈夫!今日は酔えそうにないから!」

千歳の注意も聞かず、次は何を頼もうかとメニューに手を伸ばす。

「もう、知らないからね」

千歳が呆れた顔をしている。

だって、こうでもしなきゃやってられないんだもん。


その後も私は千歳の静止を振り切り、お酒を頼み続けた。

< 37 / 193 >

この作品をシェア

pagetop