身代わりペット
確かに紗月はあのクズと結婚したがっている。

アタシにはあんな男のどこが良いのかサッパリだし、紗月の幸せを願うならこんなクズとは別れろと言ってやるのに、強く出る事が出来なかった。


それから今日まで、この事は紗月には話していない。


もうあのホテル街でアイツを見かけないからその後どうなったのかは分からないけど、本当に全ての女と手を切っているのだろうか。

紗月の話を聞いていると、まだ続いている可能性が高い気がする。

今日だって「友達」って言っていたみたいだけど、それが男なのか女なのか分からない。

アタシには、浮気相手と会っている様にしか思えなかった。

(やっぱり、教えた方が良かったかな……)

でも、紗月がアイツを好きな事も知っているから、どうしたもんかと、今日まで来ている。

「しかし……」

完全に酔い潰れてしまった紗月をチラッと見る。

そんな事より今は、酔い潰れた紗月をどうするかだ。

流石にこうなってしまっては、アタシ一人の力では送って行く事が出来ない。

「う~ん……あっ!」

少し悩んで、良い事を思いついた。

時計を見ると、22時を少し回った所。

アタシは携帯を取り出し、ある人に電話を掛けた。

「……あ、もしもし、三嶋です。夜分遅くに申し訳ありません。今お時間よろしいですか――」
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