さよなら流れ星




「お母さんはリビングか?」
「うん、たぶん。あたし今起きたからわかんないけど。」
「夏休みだからってあんまりグダグダしてちゃダメだぞ!」


笑いながらあたしに背を向けると、リビングに向かって階段を下っていくお父さん。
その瞳がチラリとあたしの部屋の隣の扉に向かって動いたのを、あたしは見た。

その扉が開かれる気配はない。
お父さんがあんなにわざとらしく大きな声を出していたんだから、帰ってきたことに気づいているだろうに。


朝ごはんを食べていないからか、お腹の虫がぐうと鳴った。
一旦部屋に戻ってスマホを充電器から抜くと、ジャージのままで階段を下る。

リビングのドアを開けた瞬間流れてきた冷たい空気に、思わず身を震わせた。
たしかに今日は暑いけど、こんなに冷房ガンガンにしなくてもいいんじゃないだろうか。

ダイニングテーブルに向かい合って座るお父さんとお母さんが目に入って、「おはよう」と微笑む。

お父さんはさっきみたいに満面の笑顔を返してくれたけど、お母さんは飲んでいたコーヒーのカップを音を立ててテーブルに置くと、眉毛を片方だけ上げて、

「なんでまだパジャマなの?だらしないから着替えてきなさい。」

とぴしゃりと言い放った。





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