特別な君のために

そして十分後。

美冬の腕に、隊長カエルと、二等兵カエルと、特殊部隊カエルと、衛生兵カエルと、楽隊カエル、五体勢ぞろいさせてやることができた。

「さ、約束通り、語ってもらおうか」

フリースペースの端で、アイスコーヒーを飲みながら語ることにした。

俺の前には美冬。そのさらに手前には、カエルの軍隊がじいいっと美冬を見つめて励ましているようにも見える。

いや、大勢に取り囲まれて尋問されているといった方が近いかも知れない。


「この指、妹にやられたんです。洗面所のドアに挟まれちゃって」

ドアに、挟まれた!?

よほどおっちょこちょいな妹なのか、はたまた小さいのか。

「大変だったな。妹さんも後悔してるさ、きっと」

「いえ、後悔、という概念があるかどうか。妹は知的障がいを併せ持つ自閉症なんです」


……全然知らなかった。美冬に妹がいたことすら、知らなかった。

しかも、自閉症、知的障がい……。

それはまた、俺とも違う人生ハードモードだな。


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