その笑顔が見たい



「ピンポーン」


タイミングを計ったように玄関のベルが鳴った。

「誰か…来た」

息も絶え絶えに葉月が玄関に出ようとするが「いいよ」とそれを阻止する。
「でも…」葉月の抵抗は抑え込めるが、玄関のインターフォンを止めるのは無理だった。



「ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!!!!」


誰だ、連打するのは。

「ちっ!」

玄関に出ようとする葉月を止めた。

「服、直して!」

「あっ!」

めくれ上がったシャツを俺以外に見せるつもりはない。いくら兄弟でも。
インターホンのカメラに写っている聡を睨みつけた。

不機嫌な顔を隠さずに玄関を開けると


「サプラーイズ!」

聡と結婚が決まっているその彼女、そして葉月の両親にうちの両親、円香さんと佐川さんと二人の愛娘だった。


「は?」

親類のようなものだ、遠慮がない。

「お邪魔しまーす」

一斉にドタドタと家に上がって来た。

「まじかー」

葉月はこの襲来にあたふたしている。

「おもてなしするものが何もないよ」

と言ってるが、「あるあるー」とうちの母親と葉月の母親が皿や鍋ごとの料理を運んで来た。
どうやら隣の実家で仕込んで来たらしい。

「これ、飲み物」

佐川さんがビール、酒、焼酎、ノンアルコールとたっぷり入った袋を手渡す。
ただ騒いでる聡を見て「お前は?」と催促すると「俺は特別ー」で手ぶらだそうだ。
そういうわけにもいかないと、彼女がデザートを持参してくれていた。



葉月との甘い時間はお預けになってしまったが、こういう時間の過ごし方も嫌いじゃない。
家族がまたこうして一緒に居られる時間が来るなんて、あの頃は思わなかった。
葉月がいなくなったあの日、絶望に打ちひしがれた。
あんな思いは二度としたくない。

だから葉月をもう離さない。


< 138 / 138 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:20

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

幼な妻だって一生懸命なんです!

総文字数/73,706

恋愛(その他)90ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
瀬戸 美波 (21) せと みなみ 高山百貨店 紅茶専門店勤務 突然、長瀬要に公開プロポーズをされ、のちに要と結婚。 長瀬 要 (32) ながせ かなめ 高山百貨店 経営戦略室室長 川西菜々子 (32) かわにし ななこ 美波の職場の先輩。要と同期。
朝、目が覚めたらそばにいて

総文字数/39,470

恋愛(その他)72ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
小説の中だけでヒロインになれる時間が好き 恋愛小説を読むことが趣味。 でもそれは架空の世界。 その世界が現実になるなんて… 山下環奈(やました かんな) 25歳 電機メーカー総務課に勤める普通の会社員 恋愛小説に夢中になる夢見がちな女子。 坂口正太郎(さかぐち しょうたろう) 28歳 本屋で環奈が出会ったぶっきらぼうで無愛想な男性。 如月千秋(きさらぎ ちあき) 年齢不詳 恋愛小説家。 彼女の書く小説の中に出てくる男性はどれも環奈の理想。 川原沙也加(かわはら さやか) 25歳 環奈の同期で親友 登坂修一(とさか しゅういち)25歳 環奈と沙也加の同期。 佐々木塔子(ささき とうこ)33歳 如月千秋の編集担当。 作家の才能を引き出したくずっとついている 2018.1.17 【恋愛】編集部オススメ小説に紹介いただきました。 ありがとうございます。 2019.9.4
空ノ地図

総文字数/124

詩・短歌・俳句・川柳2ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
写真とコトバ

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop