添い寝は日替わり交代制!?

「では。お疲れ様。」

 ワイングラスを手にした佐々木課長に心春は自分のグラスを近づける。
 少し驚いた様子の佐々木課長がワイングラスを遠ざけると柔らかく指摘した。

「おっと…ワインはグラス同士を合わせないんですよ。
 ………すみません。
 どうしても説教じみてしまって。」

「いえ。こちらこそ勉強不足で……。」

 またしても恥ずかしい思いをしてしまった。

 でもそのおかげでよく分かる。
 佐々木課長とは住む世界が違うんだ。

 ちょっといい経験をさせてもらえたと思って早めに帰らせてもらおう。

「気にすることはありません。
 年を重ねれば嫌でも身につくものです。」

 ………優しいんだよなぁ。
 本当の佐々木課長はどれなんだろう。

 普段の佐々木課長も優しい…ような気もするんだけど、やっぱり怖さが先行しちゃうんだよね。

 ぼんやりしてしまった心春に「さぁ食べてみてください」と促された。

 ビーフシチューを口に入れれば程よい弾力のあるお肉がデミグラスソースといいハーモニーになって、口の中が濃厚な味で満たされていく。

「とっても美味しいです。
 お料理お上手なんですね。
 お嫁さんにしたいくらいです。」

「ハハハッ。
 最高の褒め言葉ですね。
 やはり中島さんとの食事は楽しいです。」

 和やかな雰囲気で食事は進み、このままおいとま出来れば最高なんだけどなぁ。
 そう思っていた心春に佐々木課長が先ほどの続きを話し始めた。

 それは少し唐突な始まりだった。

「この前、私は誕生日が来て33歳になりました。」

「そうだったんですね。
 おめでとうございます。」

 なんの発表なのかな。
 分からない心春は続きを聞くより他なかった。

「めでたくないんですよ。
 なんでしょうね。
 私も若い頃は分からなかったのですが、近頃は年を取ったなぁって感じる時があるんです。」

「またまたー。
 佐々木課長はまだまだお若いじゃないですか。」

 少なくともおじさんには見えない。
 かといって若々しいというのも変だ。
 『年齢不詳』が一番しっくりくる。

「ダメですね。
 一番思うのは……。
 ほら。昨日みたいな日です。」

「??昨日ですか?」

 徹夜とか若い頃は平気だったのに無理できなくなったとか、そういうやつかな?
 だとしたら私のせいでもある!
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