添い寝は日替わり交代制!?
9.飲まなくても済む方法

 マンションに帰りますと連絡したくても、連絡先を知らなかったことに気づいた。
 そもそも『帰ります』って!!

 と、とにかく連絡先を交換しないと一緒に住むには不便だと悟った。

 鍵を持ってはいるんだけど、勝手に入るのは気が引けてインターフォンを押す。

「はい………。…………ッ!
 少し待ってから来てください。」

 明らかに動揺している声色。
 やっぱり早く来過ぎたのかな。

 後悔の渦に飲み込まれそうになって突っ立っていると、心春の前のドアが開いた。

「すみません。お待たせしました。」

 佐々木課長の顔を見た途端に陽菜の言葉を思い出す。

「佐々木課長は心春のこと好きなんだって!」

 いやいやいやいや。

「酔った時しか優しくなくて、それでも酔わせたくないなら、名前呼びすればいいんじゃない?」

 いやいやいやいや。

 どんどん今、思い出しちゃいけない会話を思い出してしまって顔が赤くなる。

「どうしました?
 とにかく何か入ってください。
 お友達との話し合いはどうなりましたか?」

 優しく腕をつかまれて部屋にいざなわれ確信した。

 さっきの『少し待って』はお酒を飲む時間だったんだ。

 思った通り、シンクの脇に缶ビールが置いてある。
 きっと中身は空で前みたいにすごい勢いで飲んだんだろう。

「ごめんなさい。」

「え?」

「また私のために無理して飲まれたんですよね?」

 佐々木課長の視線が缶ビールに向かって、心春の真意が伝わったようだ。

「無理はしていません。」

「でも!!!」

 飲ませてると思う度に申し訳なくなる。

 何か伝えなきゃと思うのに、佐々木課長に向けていた視線を下におろしてしまった。
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