添い寝は日替わり交代制!?
 相手は宇佐美くんだ。

「宇佐美くん…。」

 そのつぶやきに貴也さんの顔が一瞬曇った気がして、その後に「出てあげてください」と言うと頬杖をついてそのままこちらを見ている。

 出たくないけど出た方がいいのかな。
 重い気持ちのまま携帯を手に取った。

「はい。中島です。」

「中島さん?」

 はい。と返事をしようとしたところで携帯を持つ手が軽くなり、その携帯は貴也さんの手の中だった。

「佐々木ですが、私も中島さんの手料理をご馳走になりました。」

 え?何?何?
 なんで貴也さんが電話に出て、しかもそんなこと宇佐美くんに言う必要あるの?

 携帯が返されて耳に当てると向こう側から笑い声が聞こえる。

「もしもし?宇佐美くん?」

 ひとしきり大笑いした宇佐美くんが笑いを堪えながら口を開いた。

「佐々木課長なんなんだよ。
 中島さん。
 どうして佐々木課長のところに?」

 どうしてと言われても困る。

 目の前には貴也さん。
 携帯の宇佐美くんの声も漏れ伝わっているくらいの距離。

「チッ。全部裏目に出たってわけだ。
 俺バカみたいだな。
 中島さん佐々木課長のこと好きなんだろ。」

「え?な、なに言って…。」

 だからどうして貴也さんがすぐ近くにいるのを分かっててそんなことを…。

「俺んとこに井上さん来たぜ。
 まぁいいよ。中島さん解放してあげても。
 その代わり佐々木課長が好きだって認めてよ。」

「え??」

 何それ。どうしてそんなこと。
 だいたい、すごく高圧的な態度でどうしてそんなこと聞かれなきゃいけないの?

「好きなんだろ?
 佐々木課長のこと。」

 好きって…。
 分からない。

 分からないけど吉田先輩に「恋とは知らないうちに誰かのことを考えてる時」と言われて思い浮かんだのは佐々木課長だった。

 いつも何かあれば思い浮かぶ人。

「…うん。たぶん…そうだと思う。」

 好きだからなんだ。
 全てのことが腑に落ちて素直に答えてしまった。

 どうしよう。
 全部、貴也さんに聞こえてるのかな。
 ドキドキし過ぎて貴也さんを見れない。

「ちぇ。俺、道化かよ。
 ま、代わりの添い寝相手を見つけたからいいけどさ。
 じゃ佐々木課長にもよろしく。」

 どれだけ携帯を耳に当てても切れてしまった電話は何も言葉を発しない。

 電話を切って貴也さんと会話する勇気なんてまだ出てないのに。

 どうしよう。聞こえてたのかな。

 貴也さんにどんな顔を向けたらいいのか。
 唯一の救いは佐々木課長じゃなくて貴也さんってことだけだけど。

 貴也さんの方を見れないまま携帯をテーブルに置いた。

「電話が終わったのなら片づけをして寝る準備をしなければ。
 今日はもう遅いですよ。」

 拍子抜けするくらい電話の内容には何も触れられなかった。

 聞こえてなかったってこと?

 先に食器を持って席を立ってしまった貴也さんの表情は読み取れない。

 聞こえなかったなら良かったんだけど。

 釈然としないまま自分も食器を手にキッチンへと向かった。




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