添い寝は日替わり交代制!?
29.貴也さんは佐々木課長で
 悲しくてこぼれてしまいそうな涙がテーブルに落ちそうになったところで急に引っ込んでしまった。

 体の横から何かにふんわりと覆われて、気づけば体は佐々木課長の腕の中にあったのだ。

 どこかに行く気配のどこかは心春の側だった。

「こんな風に悲しませることしかできない自分が不甲斐ないです。
 自分が嫌でため息しか出ません。
 本当はよくやったと褒めたい気持ちでいっぱいなんです。
 でも中島さんの成長を妨げるわけにもいきませんから。」

 温かい優しい声。
 どこか申し訳なさそうな憂いを帯びている声に鼻の奥がツンとした。

「私がダメだからため息をつかれたと…。」

 そこまで言うのでさえ声が掠れてしまって、回された手にしがみついてしまった。

 それが合図のように佐々木課長に抱き寄せられると胸元に顔をうずめた。
 後から後から涙が出てしまって、いつの間にか声を上げて泣いていた。


 ふと気づけばリビングのソファのようだった。
 しがみついたまま泣き疲れて眠ってしまったらしく、つかんだままの佐々木課長の胸元の服が皺になっていた。

 あんなに泣いちゃうなんて恥ずかしい。
 でも…あんなに声を上げて泣くなんて……陽菜以外の人に…。

「目が覚めました?
 泣き疲れるほど泣かせてしまってすみませんでした。」

 相変わらず低音の声が柔らかく頭の上から降ってくると、大きな手が顔にかかる髪を横に流してくれて、まぶたを優しく拭いてくれた。

「お見苦しいところをすみませんでした。」

 改めて会話すると猛烈に恥ずかしい気持ちになってこの場から離れようと急ぐ。

 しかしその体は引き戻された。

「離れないで。このまま。もう少しだけ。」

 切ない声色に胸が締め付けられると抱き寄せられるがままに体を預けた。



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