添い寝は日替わり交代制!?
37.ぬくもり
 こんなにも1人のマンションが寂しいなんて思いもしなかった。
 貴也さんのぬくもりに甘えていたんだと気付かされる。

 お腹は空いているはずなのに食べれる気分じゃなくて、いつまでも鳴らない携帯とにらめっこしたまま眠ってしまった。


「風邪ひきますよ。」

 温かな優しい声に重いまぶたを押し上げるとスーツ姿のままの貴也さんがいた。

「もう3日経ちましたか?」

 夢見心地で質問すると顔を覗き込んだ貴也さんがおでこにキスをして「一緒にお風呂でも入りますか?」とささやいた。

 な………。

 クスクス笑う貴也さんが「着替えてきます」と部屋に行ってしまった。

 おでこに手を当てながら体を起こすと節々が痛くて夢じゃないことが嫌でも分かる。
 テーブルで変な体勢のまま寝ていたみたいだ。

 夢じゃないのならどうしてここに貴也さんが………。

 ネクタイを緩めながら部屋から出てきた貴也さんを今一度見てみても開いたシャツから露わになる胸元に目がチカチカするだけで答えは出てこない。

「着替えをしに部屋に行ったんじゃ……。」

「着替える時間も離れていたくないなんてわがままですか?」

 体ごと目を背けた心春に覆い被さるように貴也さんが後ろから抱きついてきた。

「連絡できなくてすみませんでした。
 それよりも何よりも帰ってきたかった。」

「帰ってって、北海道ですよ?」

 嬉しいのに驚きが先に出て素直に喜べない。

「飛行機と移動時間その他もろもろを含めて3、4時間です。
 帰ってこれない時間じゃない。」

「でも……。」

「分かりませんか?
 そうまでしてもこはちゃんと一緒にいたいのです。」

 どうしてそこまで……。
 ちょっとでも貴也さんを疑ってしまった自分が恥ずかしい。

 必ず帰るなんて嘘ばっかり。
 連絡もくれないしって思ってた。

 でも嘘じゃなかった。帰って来てくれた。

「今日は1人で寝るんだと思って……。」

 さっきまで押し寄せていた寂しさと本当に貴也さんがいるんだという安心感で涙がこぼれてくる。

「どうして泣くんです?
 どうも私はこはちゃんを泣かせてばかりで……。」

 困ったように言った貴也さんは頭にキスをして「可愛い顔を見せてください」と歯が浮くようなことを言った。

「……本当に貴也さんですか?
 貴也さんのそっくりさんかも。」

「ハハッ。それは妬けちゃいますね。
 私に似た人がこはちゃんを抱きしめていたら。」

 私も本当に貴也さんなんだと確かめるように振り返ると、目尻を下げた貴也さんが「ただいま」と笑った。





< 91 / 98 >

この作品をシェア

pagetop