たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「俺は女を愛せないのではなく、愛さないようにしていた。それが俺の本心だ」

エルンストはフィーアの耳元でささやく。


「情が移るのが怖かった。だから娼婦しか抱かなかった。
俺は幼い頃に母上を亡くした衝撃と悲しみがトラウマとなり、辛い思いをしたくないがために女を愛さないようにしていた。俺の目の前から去ってしまうのが嫌だった。
愛する人を失った時の悲しみを二度と味あわないために。愛することを恐れていた。だがそれでいいと思った。女など俺には必要ないと」


エルンストはフィーアを抱いたままそのグレーの大きな瞳を見つめた。


「だが、俺の心を揺さぶる娘が....俺の前に現れた」


フィーアの濡れた瞳はエルンストを見つめている。


「求めるものはただひとつ。お前の心だ」


切れ長の瞳はフィーアの心を射抜いた。

エルンストの求めるものは体なんかじゃない。

失われることのない真実の愛。



「俺を孤独から解放してくれ」


フィーアの温かい手の平はエルンストのほほに優しく触れた。そこにエルンストの手が重なる。


「俺に愛を教えてくれ」


フィーアはエルンストの唇へ自らのそれを重ねた。


....エルンストは静かにフィーアを草の上に横たえる。


指と指をからめると、時を忘れたように長い長い口づけを交わした。


蛍の光が消えるまで。
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