*゚闇に沈む少女*゚

✲*゚沖田side゚*✲




池田屋を襲撃し終わり、屯所に帰ってきた
僕は お風呂で湯舟に浸っていた。





その時 ぼんやりと頭に浮かんだのは
彼女....雛菊さんの事だった。





襲撃前、正直 僕は体調が悪かった
しかし、あの娘から貰った薬を飲んだ後は
驚くぐらい良好だった。



もらった薬は 体調が悪かったから
幻影かもしれないけど、とても赤い宝石のように見えた。






池田屋を襲撃する時




雛菊さんの研ぎ澄まされた神経は
僕にも伝わり



次々 敵を殺さず、全員残らず
気絶へと導いた。




長州の中で 強敵とされる
吉田稔麿にさえ、一瞬の攻撃だった。





実は、離れる振りをして、こっそりと見ていた....すると 捕らえたはずの古高俊太郎の姿があり



気絶した 吉田稔麿と一緒に
何処かへ消えてしまった。






彼女は何一つ言わない....
彼女に会ってから 大分経つというのに
雛菊さんが二刀流の事さえも知らなかった。









....綺麗な容姿なのに、何故隠すのだろう?


美しい艶やかな赤紫に可愛らしい桃色があって、輝かしい大きい蒼と紫の瞳。

白い肌に似合うぷるんとした唇
そんな容姿の持ち主なのに 無自覚....





「君、古高俊太郎と吉田稔麿を逃がしたでしょ?」





そう言うと、雛菊さんは自嘲な笑みを零した。




その笑顔が 何だか切なそうで
もどかしくなった僕は....





「長州の者を気絶させたり、ホントに何がしたいんですか?」





「........」






「黙ってないで、何か言ったらどうです?




それだと、また疑われますよ。」






やりきれない気持ちに負け
そう口に出してしまった........けど、言ってしまったものは もう戻せない。





後悔をした僕は、自分でも無意識に
彼女を抱きしめていた。






しかも、気付けば呼び捨てで呼んでいた。





「ごめん、君を追い詰めたい訳じゃない......。



紫陽花ちゃんが 何でも1人でやろうとするから僕も もどかしくって苦しい。




もうちょっと...僕らを頼ってくれても良いんじゃない?」





必死の謝罪と本音を込めると
自然と彼女を離せなかった........







「......やめて。」





彼女は、そう言うけど やめられなかった。



あまりにも 辛そうな悲しそうに言うから....






「僕らは、絶対に君を離さない。」





強めに抱いていたのに
それにも 彼女は表情を隠しながら
逃げてしまった。





....僕らは、仲間だ。





君に、人を頼るということを教えたいよ。






僕も、この組に支えられて
やっと1番隊という仕事を貰えている。





今度は、僕がそれを君に教える番。





そう思っていた 沖田総司は、
別の気持ちを抱いていた....それを彼が
気付くのは もう少し先の事。







✲*゚沖田side END゚*✲
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