戯言
戯言
彼女が突然こんなことを言ってきた。

「貴方の愛は重いのです。」

彼女は馬鹿なのかと疑った。
俺は、悲しい事だがもう彼女に愛情など持ってなかった。彼女もそれを分かっているはずだった。
愛が重いのは彼女の方だ。帰ってこない俺を健気に待つ。もう3年も経つと言うのに意味がわからなかった。


一年前、同棲して3年ほど経ったとき。俺は浮気というものに走った。相手は友達の付き合いで飲みに行った時に出会った女だった。あいつに罪悪感はなかった。何故なら彼女に注ぐ愛情は毎日飲むコーヒーを飲み終えた時のように、からからの空っぽだったからだ。まさに恋は3年という感じだった。

「付き合うって契約みたいで面倒じゃない。」

そう言った女がなんだか羨ましく思った。確かに契約と同じようなものだ。俺は彼女を愛していないのに、付き合うと言う契約をしたまま放置している。まるで詐欺みたいだ。
好きなら好き、嫌いなら嫌いでいいじゃないか。自己満足でいいじゃないか。

そんな夜、俺はああ、こんな女が側にいればいいのにと思ってしまった。恋愛感情は持たないが。

それからと言うもの、あの女に対して浮ついた気は一切持っていないが、浮気というものを重ねていった。


勘の鋭い俺の彼女だ。浮気にも気づいていたはずだ。


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