こゝろ





「いえいえ。私の方こそ、送ってもらってすみません。」



島原くんは暗くなったお詫びにと私を家まで送ると言ってくれました。もちろん断りましたが、もうかなり私の家の近くまで来ています。



同じ気持ちになりました。ああ、この時間がずっと続けばいいのに……と。



「どうせなら今度、お礼させてよ。」



送ってくれるだけでも有難いのに、島原くんは尚、お礼をしてくれようとしていました。



「いいですよ、そんな……。」



「いいんだよ。ホントに助かったし。あ、そうだ! パフェとか好き?」



「パフェ……ですか?」



「そう。学校の近くに喫茶店ができたじゃん? あそこのパフェが美味しいって聞いてさ。」



その話を誰に聞いたのでしょうか。私はとても訊くことができませんでした。



パフェを男の子が好んで食べるとはとても思えません。ということは、島原くんにあの喫茶店のパフェが美味しいことを教えたのは女の子ということになります。



島原くんに彼女がいるかどうかは知りません。いないとしても、好きな人、島原くんが私じゃない他の女の子と話しているだけで、それを遠くから見ているだけで、もどかしくて、耐えられなくなるのです。



「パフェは好きですけど……。」



パフェなんてどうでもいいんです。



「島原くんのことが好き。」この一言が言えたら、どんなに幸せなことでしょうか。



それが言えないのは、私に自信がないからで、でも、自分に自信を持つにはどうしたらいいかわからない。わからないから言えない。



恋というものはそういうものなんだと改めて教えられた、そんな夜でした。




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