彼と私の優先順位
カタン。

起票を済ませた伝票を手に、立ち上がる。

支払い処理を預金係の同期に頼もうと、一階の営業フロアに向かう。

私の席がある二階にはお客様用の窓口はない。

フロア内の窓口後方、仕切りで区切られた同期の小石川千恵に声をかける。

窓口営業時間内のため、フロアは忙しそうだった。



「千恵ちゃん、今、いい?」

「ん?
ああ、結奈。
伝票?」



顎の下くらいまでの髪を内側に軽く巻いて、丁寧にマスカラを塗った瞳を私に向ける千恵ちゃん。

千恵ちゃんは私の仲の良い、数少ない同期だ。

全国に同期は何人もいるけれど、実際、勤務店が同じ同期は千恵ちゃんを含め二人しかいない。

もう一人は営業第二部に所属している渉外係の三橋くんという男子だ。

三橋くんは、細身で人懐っこい笑顔が印象的だ。

目下、彼女を募集中らしく、よく千恵ちゃんに誰か紹介してほしいと懇願している。

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