ヒトツバタゴ
清廉

〜雪はとけて川に流るる〜



繋いだ手はそのままに駅からのいつもの道を歩く



伝わってくる熱が夢ではないと主張する



友達の期間が長過ぎて、私の意思で手を繋いでいるということがなんだか恥ずかしい





徒歩5分の道のりの最後の角を曲がるとマンションの前に人だかり…


それに消防車とパトカーも




まさか




橘と顔を見合わせ、人だかりまでの数十メートルを走った




「さつきちゃん!!」



人だかりに近付くと、張られたロープの外側で警察と話していた大家さんが私に気付いた



もう8年の付き合いになる大家さんは白髪の淑女で、自宅の庭で採れたと季節ごとに野菜や果物をお裾分けしてくれる




「良かった。電話が繋がらないから逃げ遅れたのかと…」



安堵の表情を見せる大家さんの言葉にポケットから携帯を取り出す



あ…



「ごめんなさい。昨日から会社の旅行で、電池切れちゃってたみたい」



苦笑して真っ暗な画面を見せる




「あなたが火元の部屋の方ですか?」




「え…」




警察の言葉に頭が真っ白になった




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