明日、君を好きになる
厄介なことになったと、思った。

今更ながら、親切心で起こした、昨日の軽率な行動を反省する。

第一そう言われたところで、今日はあいにく、チョコなど持ち合わせていない。

『すみません…実はサービスと言っても、通常にはなくて…』
『そうなの?』
『はい、えっと…昨日は、ちょっと個人的に』
『個人的に?』
『あ、いやいや、そうじゃなくてですね…』

我ながら、話せば話すほど、墓穴を掘っているようだった。

正直言うと、この晴天の下、自分とは縁のない世界に住む人間に真正面から見つめられ、動揺しまくってしまった。

この手の対応には自信があったのに、どうにも調子が狂う。

どうしたものかと、次の一手を考えていると、目の前の男性が急に吹き出した。

『え?あの…?』
『ごめんごめん、冗談だよ、冗談』
『はい??』

訳も分からず、その場で立ち尽くすと、ひとしきり笑ってから、居住まいを正す。

『ああ、本当ごめん。そんなに動揺すると思わなかったんだ』
『…はぁ』
『えっと、エリコちゃん?』
『え!』

いきなり名前を呼ばれて、びっくりするも、彼が指さした先にある、自分のネームプレート(ローマ字で名前だけが書いてある)を思い出し、飛び上がる心臓を、落ち着かせる。
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