明日、君を好きになる
着いたお店は、住宅街にひっそりと建つウッド調の建物が印象的な、家庭的なイタリアンのお店。

備えつけられた駐車場は、住宅街にしては広めに作られていたけれど、ほぼ満車に近く、人気の高さが伺える。

『素敵なお店ですね』
『ネットで評判が良くてね、味も絶品らしい。高級な店より、こっちの方がエリは好きだろ?』

何を根拠に、そんな断言が出来るのか謎だけれど、あながち外れていないだけに、またドキリとさせられる。

いつだったか、“好きな食べ物は?”と聞かれて、こちらは適当に答えただけなのに、それを本当にリサーチしておくとか、これは彼の職業柄なのだろうか?

店内は思ったよりも広く、樹木の香りが心地良い。

大きめに作られた窓からの景色も緑豊かで、都会の住宅街とは思えないほど。

既に午後1時を過ぎ、食事を終えた人が帰り、運良く空いた窓側に面した席に案内される。

『さぁ遠慮せず、好きな物頼んで。今日のお詫びに、本当に御馳走するよ』
『?…お詫びって、何のですか?』
『ほらさっき、君の婚活のチャンス、奪っちゃったしね』
『あ、あれは…』

否定しようとするも、実際のところ、小野崎さんが来なかったら彼女たちに着いて行こうとしていた自分を否定できず、続く言葉が出て来ない。

『フッ…君は、ホント嘘が付けない人だな』

そう笑うと、近くにいた店員を呼び、サクッと自分の注文を言い終えると、『後は彼女に』と促される。

仕方なく、お店のおススメパスタとアイスティーを注文した。
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