私の二人の神様へ

無防備





「私、読み終わったんだけど」



「ふーん」



「まだ読み終わらないの?」



「お前のマンガと一緒にすんな」



「ちょっと、それマンガに失礼!」



 握りこぶしで榊田君を叩くが、彼は私に構っていられないと無視をし始めた。


 こう無視をされると、なおさら構って欲しくなる。


 というか、甘えたい。


 今日でとりあえず長い受験生活も一区切りしたのだから、ご褒美が欲しい。


 私は、何とか構ってもらおうと彼の首に腕を回し背中にのしかかる。


 そのまま思いっきり体重をかけ、彼の読んでいる本を覗き込む。


 分厚い上に字が小さくて、思わず顔をしかめてしまう。


 彼はこんな本ばかり読むから、しかめ面なのではないだろうか。



















「……重い。離れろ」



「そんな軟弱な鍛え方してないでしょ?それに私は重くありません!こんなの読んで楽しい?」



「水野、お前な……。離れろ!」



 そう言って、彼の首に絡みついた手を引き剥がされ、ついでに身体も引き剥がされた。


 これが恋人に取る態度だろうか?


 私は機嫌を損ねた。



「俺は本を読んでんだ。邪魔すんな」



 難しい本だ。


 話しかけられたりしたら、わけがわからなくなるだろう。


 でも、私がいる時ぐらい私を優先して欲しい。



「付き合う時に榊田君は甘えても良いって言ったじゃない?」



 正確には言ってないけど、私の甘えたがりを許容してくれると私は解釈した。


 今まで勉強で忙しくて甘えている暇なんてなかったから、存分に甘えたかったのに。


 ぶすっとむくれていると、彼はため息を吐いた。


 それがうんざりしているようで、やっぱり甘えられるのは鬱陶しいのだとわかった。


 彼が嫌がることはしたくない。


 だから、さらりと笑顔を作った。





< 100 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop