私の二人の神様へ







 その拍子に涙がこぼれそうになって、ぐっと堪えた。


 このまま、涙を一滴でもこぼせば次々に溢れてしまう。


 仁くんが私の顔を覗き込もうとした。


 彼にはバレてしまう。


 気づかれてしまう。


 だから、仁くんに抱きついた。


 仁くんに見られないように。


























「小春?」



 これが最後だ。


 抱きつけるのもこれが最後。


 思えば、七年ぶりに再会してから一度も抱きついたことなんてなかった。


 昔はいつでも抱きついていたのに。


 これが最初で最後。


 そう思うと、やっぱり涙がこぼれそうになって。



「仁くん、大好き!」



 昔もこうして抱きつきながら、ありったけの思いをこめて叫んでいた。


 でも、これが子供扱いの原因だと思って、封印していた。


 一人の女性として見て欲しくて。


 一人の女性として抱きつきたかったし、抱きしめられたかった。


 彼はふんわりと私を抱きしめた。



「俺も小春が好きだぞ」



 潤んだ目にオレンジ色の光が入り込んできた。


 こうして見る最後の夕焼けをしっかり目に焼付けよう。


 忘れないように。


 しっかりと。


 この綺麗で悲しい夕焼けを。





















「……おい。佳苗。これは浮気だぞ」



「う~ん。ここまで堂々とされると困るね。どうしよう?」



 佳苗さんは首を傾げ、眉を下げた。


 私は仁くんの背中に回していた腕を放し、彼から離れた。



「佳苗さん。これが最後だから許してください。榊田君!帰ろう」


 出来る限り、精一杯元気良く、笑顔で言った。
















< 83 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop