浅葱色の忍
伊東さんが帰って来てから
山崎は、警戒心を解いた


それでも、顔は隠したままで


やはり、急に信用ということは
難しいようだ



そんな時、かっちゃんの妾
深雪の妹が、懐妊したと知らせがあった



おいおい



まぁ 妾なんだから、おかしくないが






それを聞いた日
山崎は、休みが欲しいと言ってきた

さぞ、烝華を心配しているのだろうと


「烝華のとこに行くのか?」


「ついでに行くくらいですけど」


「ついでかよ」


俺の思い過ごしで
こいつは、気にしていなかった





だが…







休みを終えて帰って来た山崎は

全員を凍りつかせる

まさに 鬼





会議に荒々しく乗り込んで来たかと思えば
伊東さんの前に立ち見下ろした


その目に殺気が宿り


伊東さんの隣にいた俺は
スッと2人の肩に手を出す構えをした


山崎が、理由なしにこんなふうにならない

伊東さんには、どこか余裕があり



この休みに、何かされたことは
察しがつく




「新選組の為よ」



伊東さんが笑った




ピクリともせず




「殺すぞ」




山崎が低く言い放った




「山崎君 落ち着いて!」



かっちゃんも唖然としている中
総司が、山崎の斜め後ろに立ち
声を掛ける


山崎の殺気が、言葉が
本気だからこそ
俺と総司、2人がかりで止める体勢になっている



「顔、いい加減に見せてよ」



伊東さんの言葉に、山崎が布を取り去った



整った女顔は


思わずゴクリと咽を鳴らすほど

本物の鬼かって

でも、山崎が綺麗だと、なぜか思えた





「これで満足か!?
次は、ねえからな…
例え、局長、副長に背いても
切腹になっても、殺す」



「うふふっ そんなに怒らないで!
それにしても髪型が違うだけで
本当に妹さんとそっくりね」



「チッ」








数日後




山崎が、また


普通に喋らなくなった



総司にも

冷たいらしい



どうしたものかと



考えていると






中川宮より、銀20枚が贈られてきた







何の御礼だ?






伊東さんは、心当たりがあるようで
〝新選組の為よ〟
伊東さんの言葉を思い出して

これが、山崎を怒らせた理由ではと

だが、山崎も伊東さんも

何も喋ってくれなかった




















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