浅葱色の忍

烝の夢

側室、最期の夜



俺は、妻として

慶喜に身を捧げた




いつも… これが最後かも…





そう感じていた


その最後が今夜だった











年が明けたら



念願の忍



慶喜という主に仕える






「寒い」




という理由で、慶喜の腕の中で眠る



初めての夜のように




寝坊した朝




「もう少し…」




慶喜がぎゅうっと抱きしめてくれた



名残惜しく


寂しい気持ちになる


















年が明け










ついに、忍の誓いをたてる日







慶喜の前に座った




梅沢 平岡 美賀子 そして、阿部






いよいよや…





長く伸びた髪を束ね


「烝華様? え!ちょっと!!」




ザクッ




「御髪が…」





美賀子が、固まった



「こんなに伸ばしたの初めてで
邪魔だったんだよな」


ニカッと笑うと


「なんだ… 儀式とは別か…
勿体ない…」



平岡が、呟いた



阿部には、先に伝えておいた

この髪を墓の隣に埋めて欲しいと





「慶喜」


「ん」


「俺の名は、山崎 烝
烝華の烝の字、烝が俺の名だ

俺は、忍


くノ一でも、田の力でもない


だから、体を売る以外、俺は何でもできる

主は、慶喜 でも…俺を使えるのは
平岡のみとする」


「え! 俺!?」


平岡の声を無視して続ける


「忍でいる間、色恋はしない
普段は、男として生活をする
名は、篠塚岸三と名乗る」


「は?なんだその名は…」


「うるさい!決められてんだよ!」




コホンと咳払いをして











「これより、一橋慶喜に仕えます」















主を持つことは

一人前の忍の証





25でやっと忍になれた














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