浅葱色の忍
皆のところに戻ると
相変わらず、畏まっていた


「あそこは、俺の主がいつも座ってんだ!
お前ここ!」


下座に座れと慶喜に言うと


「チッ!」


舌打ちして、俺を見る



「舌打ちすんな!」



「うるさい!」


とか、言いながら座る


勇が、スッと立ち
慶喜の前に座ると頭を下げた



「申し訳ございません!
山崎烝は、お返し出来ません!」



堂々と言った勇に、感動を覚える



それは、慶喜も同じみたいや



「ハッハッハッ!
烝より、此奴の方が変わり者だ!」


「は?お前のが変わり者だろ!」


「何!?俺が変わり者だと言うか!?」


「変わり者じゃなきゃ、馬鹿か?阿呆か?」


「すーすーむぅー!!!」


「うるせえ!早く帰れ!」


「会いにこい!話し相手くらいなってやる」


「面倒くさいからやだ!」


「忍び込むくらい容易いだろう?」


「簡単だけど、慶喜の面倒みるのがやだ!」


「ふんっ 相変わらずだな!
ところで、此奴が主なのか?」


「そ!局長が主、んで俺を使うのは副長!」


「だろうな!此奴は、優しすぎる!」


「慶喜は、ちっとも優しくなかったもんな」


「立場というものがあるのだ!!!」


「局長は、立場なんか気にしないけど」


「悪かったな
立場など気にせず、お前を守れば良かった
お前を失ったことは、生涯悔やむ」


「ふふっ!いい気味!
よし!俺の気は済んだから帰れ!」



シッシッと手を振る


「いつでも来い」


「気が向いたらな」





全員で、門まで見送った

慶喜の輿が、遠ざかると


「山崎君、無事に帰れるか
見届けてくるといい」


勇が、笑った


俺も笑い、ぺこりと頭を下げた


「お気遣いありがとうございます!」


局長とその忍


新選組の中では、崩してはいけない関係



でも、今


猛烈に勇に抱きつきたい

切腹になるかもしれなかったのに
あんな風に堂々と言ってくれて

ホンマに

ホンマに、おおきに!




頭を上げると、皆が笑っていた
源さんは、涙まで流していた




皆、おおきに!







「いってきます!」





















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