浅葱色の忍

近藤勇

深雪の嫉妬がどんどん増している

身請けすれば治まると思っていたが
甘かった


「大丈夫か?」


「まいったよ…」


「はっきり恋心はないって言えばいいのに
かっちゃんの気持ちが自分にないって
わかるから、あんなふうになるんだ」


「言えば、何するか…」



まいったなぁ













歳が、烝をじーっと見つめる


「なぁ?お前を俺が貰ってやろうか?」


「土方はん?」


「隠れ蓑つーか、そうすりゃ
深雪も落ち着くんじゃねえか?」


「何を言い出すんだ!歳!」


「そうどす!土方はんは、君菊がおるやないどすか?怨まれ事が増えるだけどす!
堪忍しておくれやす!」


「君菊は、深雪みてえに嫉妬深くねえよ
事情を話してお前をコソッと新選組の
女中にしてやろうかと」


「歳がそこまですることはない!」


「念の為、お前幾らなんだ?」


歳の本気に、烝も驚いているようだ



「うちは、好きでここにおります
2年ほど前に江戸から
芸事をしたくて、お兄はんに頼んで
連れて来てもらったんどす」



「てことは、借金はねえんだな」



「へえ ここから出るつもりはありまへん
お気持ちだけ有り難く」


「もしも、酷いことされたら、君菊に言え」


「へえ!おおきに!」










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