イケメン兄の甘い毒にやられてます

大人になっても

…次の日の朝、夕陽が目を覚ますと、隣で寝ているはずの圭吾の姿はどこにもなくて、もしかして、全て、夢だったんじゃないかと思ってしまい、布団から飛び起きた。

「…夢?…現実?」

言葉にしてしまうと、急に寂しくなってきて、涙が溢れてきた。

その時だった。携帯がなって、それに視線を落とすと、着信相手は圭吾だった。

夕陽は慌ててそれに出る。

「…もしもし?圭吾さん?」
「…夕陽?起きた?」

「…どうして急にいなくなっちゃうんですか?」

溜まりきった涙が頬を伝う。

「…ゴメン、仕事に行く前にどうしても大学病院にの方に用があって…泣かないで、夕陽」
「…泣いてませんよ」

精一杯の強がりを言う夕陽。

「…意地っ張り…声震えてる」
「…」

微かな声の変化にも、気づいてしまう圭吾に言い返す言葉がない。

「…夕陽」
「…何ですか?」

「…今日の勤務は?」
「…日勤です」

「…じゃあ、家に帰ったら待ってて。必ず行くから」
「…圭吾さん」

「…ん?」
「…昨日のは、夢…じゃないですよね?」

夕陽の不安一杯の声に、圭吾は優しい声で答えた。

「…夢じゃない、現実だよ。夕陽の心もカラダも、全部貰ったよ」

その言葉に、安堵のため息をつく。

「…また、病院で」
「…はい」

携帯を切ると、夕陽は思わず携帯を抱きしめた。
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