イケメン兄の甘い毒にやられてます
2.独りの夜に想う人はあの人でした
登校中も、授業中も、圭吾の事が頭から離れない。

でも、何とかかき消そうと、目の前の事に集中しようとした。

が、それは出来なかった。

体育中、注意散漫だったせいか、友達とぶつかり夕陽は転倒してしまった。

しかも、そのせいで軽い捻挫まで。

「…夕陽、帰りは俺が送るから」

春人の言葉に、夕陽は首をふる。

「…いいよ。春人は部活があるでしょ?スタメンなんだから、休んじゃダメだよ」

「…一日くらい休んだってどうってことないよ。部長には言ってあるし」

「…でも」

困惑する夕陽。春人に助け船を出したのは勿論咲。

「…夕陽、送ってもらいな!一人で帰って、また転んで悪化したらどうすんの」
「…」

「…夕陽?!」
「…わかった。そんなに怒らなくてもいいでしょ。ゴメンね春人、お願いします」

夕陽の言葉に、春人は笑顔で頷いた。

…放課後、春人の運転する自転車の後ろに乗った。

「…家まで結構あるけど大丈夫?」
「…大丈夫に決まってんだろ?足は鍛えられてんの。夕陽は人に気を遣いすぎなんだよ。俺が勝手にやってるんだから、気にすんな」

「…ありがとう」
「…ん」

その後はあんまり会話もなく、夕陽は流れる景色を見ていた。

「…夕陽、もっとちゃんと捕まれ、落ちるぞ」
「…ぁ、うん」

男の子は苦手。でも、春人だけは、苦手じゃない。しっかり春人の腰に腕を回した。

「…春人、大きくなったねー」
「…何を今さら。夕陽は小さくなった」

二人は言い合って、可笑しくなって笑い出す。
< 22 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop