black×cherry ☆番外編追加しました
そして、私と早川先生はーーー・・・。

黒崎さんのお見舞いに行った際、一度だけ、病院の廊下でばったり会った。

その時はもう、両親同士が話をして、完全に婚約が白紙に戻った後だった。

「本当に、申し訳ありませんでした・・・」

謝罪をすると、やっぱり、「僕はモテるから大丈夫」だと、爽やかな顔で笑ってくれた。

「もちろんすごく残念だけど。あんな風に黒崎さんを大切だと言うキミと、結婚できる自信が僕にもないんだ。

だから、こっちからもお断りした。お互い様だね」

「だから謝らないで」と、先生は私に言った。

「だけどもし、黒崎さんに泣かされたら。いつでも僕のところにおいで」

そう言うと、私の頭に一度優しく手を置いた。


(ーーーー・・・)


少しの時間、婚約者だったひと。

右手を上げ、笑顔で去っていく後ろ姿に、私は深く頭を下げた。




早川先生が「理想の結婚相手」であるのは、多分、今も変わらない。

だけど・・・それでも。

変えられなかった私の気持ち。それを、早川先生は受け入れてくれたんだ。


(・・・ごめんなさい・・・、ありがとうございました・・・・・・)


頭を上げた瞬間に、振り向いた早川先生と目が合った。

ーーーーもう一度。

私は、気持ちをいっぱい心に込めて、ゆっくりと頭を下げたのだった。





 






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