black×cherry ☆番外編追加しました
「黒崎、ちょっと・・・」

金曜の夜。

仕事が終わり、帰ろうと思ったところで署長に声をかけられた。

嫌な予感。

「その・・・すごく申し訳ないんだけどな、明日も出勤してほしいんだ。どうしてもおまえに頼みたいって、岩田本部長から連絡があって」

「・・・」


(あの野郎・・・)


こうして休日がつぶされるのは、これで何度目になるだろう。

周りの奴らの、気の毒そうな声もする。

「うわ・・・またじゃん、黒崎さん」

「仕方ないだろ・・・。羽鳥さんだぞ?あの羽鳥さんと婚約したって話だろ?別れさせたいんだよ、本部長」

「まあ、わからないでもないけどな・・・」


(・・・こいつら・・・)


聞こえてんぞ。

ギロリと睨むと、はっとしたように全員慌てて席を立つ。

・・・わかってる。

オレが、咲良に不釣り合いだってことも、本部長の策略も。

そんなことは、オレが一番わかってるけど。

「それ、ほんとにオレじゃないとダメなんですか。ここ二か月以上、一日も休みがないんですけど」

退院して、咲良の家に挨拶に行って、仕事復帰してから約二か月。

オレには一日たりとも休みがなかった。

予定では一応あるんだが、全て、「黒崎にしか頼めない」って理由で直前に仕事を入れられる。

本部長の差し金で。

「い、いや・・・俺も、申し訳ないとは思ってるんだ。けど、本部長直々の指示なわけだから。従わないわけにもいかないだろう」

「・・・そうですかね」

「ほ、ほら、仕事なんて、やってみるまでわからないぞ!今度こそ、本当におまえにしか頼めないようなことかもしれない」

「・・・」
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