冬の恋、夏の愛
第一章 恋のはじまり

……なにが楽しくてオレは、この夜にここにいるんだろう……。

桜木町駅周辺は、クリスマスの装い。ただでさえ多い人が、今夜はさらに多く感じた。

高校時代からの友人、海津涼介からの誘いで、桜木町に呼び出された。クリスマスなんだから、オレに気を遣わないで彼女に気を遣ってやれよ。そう言って断ったにも関わらず、だ。

夜空を見上げて、はぁーっと息を吐いてみる。白い息はふわふわと、少々不機嫌なオレをおいてけぼりにした。

「寿彦!」

ポケットに手をつっこんだまま、声のする方に視線を送ると、涼介と、女の子がふたり。

……なんだよ。てっきり、カップルとオレの、おかしな組み合わせかと思ったら。

ひとりぼっちのオレに、おせっかいな涼介からの、クリスマスプレゼントみたいなもんか。

連れてこられた女の子、かわいそうに。オレなんかと一緒にいても、楽しくなんてないのに。

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