冬の恋、夏の愛
第五章 浮気

「寿彦さん、おはよう。もう九時やで」

三月に入ったばかりの土曜日。莉乃ちゃんにゆすり起こされて目覚めた、朝。

「寿彦さん、体調悪いん?」

「んー」

なんだか、頭がぼーっとしている。そんなオレを見るなり、莉乃ちゃんが慌ててベッドから起き上がった。そして、無抵抗なオレの熱を計った。

「えっ、三十九度!? すぐ病院に行かな!」

「んー」

三十九度もあるのか。通りで頭がぼーっとするはずだ……そう思いながら、重い身体をベッドから起こすと、モソモソと身支度を始めた。

「インフルエンザかも?」

「んー」

インフルエンザか、厄介だな……。

「インフルエンザやったら、私にうつして? そしたらすぐに良くなるやろ?」

「んー」

いや。莉乃ちゃんに、こんな辛い思いはさせたくない。落ち着きなく部屋をウロウロとする莉乃ちゃんを尻目に、オレは部屋を出ていった。

インフルエンザじゃありませんように。


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