冬の恋、夏の愛
流星区民球場から、バスで駅に向かう。並んで座ると、愛しさのあまり莉乃ちゃんの手をそっと握った。

バスを降りるとき、本当はずっと握っていたい手を、人目を気にして離した。

「ご褒美に」

ボソッとつぶやき、歩き出す。駅前にある、赤い屋根の洋菓子店に入った。

「好きなの、選んで?」

「いいの? ありがとう」

莉乃ちゃんがショーケースの前で、おいしそうに並ぶケーキたちとにらめっこを始めた。さんざん悩んだ挙句、この店の人気ナンバーワンを選んだ。

「トリュフ、完売しました……」

会計をしていると、ふいに莉乃ちゃんがつぶやいた。

「トリュフがよかった?」

「ううん。ただ単に、目に入った文字を読んだだけ……」

会計を済ませ、肩を並べて店から出ようとしたときだった。

「あら。おふたり揃って」

声の主は、聖子だった。


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