冬の恋、夏の愛

梅雨が明けた七月。莉乃ちゃんには『バッティングセンターに行く』と嘘をつき、こっそり商品を引き取りに行った。

「なぁ、寿彦さん」

「んー?」

その後、ふたり揃って横浜スタジアムまで足を運び、横浜ベイブルースと神戸パンサーズの試合を観にきていた。

夏の夜は、ナイターに限る! なんて言いながら、ビールを飲んだ。浜風が吹く横浜スタジアムで飲むビールは、ビアガーデンで飲むそれと同じように、心地が良かった。

でも、今日は緊張のあまり、早くアルコールが回ってしまいそうな気さえした。

「私が隣におるの、知ってる?」

「うん」

莉乃ちゃん、今日に限っておかしな質問をするなぁ。少し気になりながら返事だけすると、またグラウンドに視線を送った。

「たぬきが踊っているな」

「あれ、ハムスターやで」

「ああ、そうか」

イニング間のパフォーマンスが終わり、青いジェット風船が横浜の夜空を彩る。ふたりで空を見上げると、莉乃ちゃんの隣にいられることを幸せに思った。

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