婚約指環は手錠の代わり!?
「何号室だ?」

「二〇三デス」

そのまま、引きずられるように部屋の前まで連れてこられた。

「鍵」

「アッ、ハイ」

渡す必要なんてないのに、考えることが麻痺してしまっている身体は、勝手に鍵を渡してしまう。
鍵を開けて中に入り、部屋の中を漁っている海瀬課長を、ただただ見ていた。

「よくこんな、セキュリティの甘いところに住んでいて無事だったな」

ぶつぶつ云いながら適当な袋にものを詰め込むと、部屋を出て鍵をかけた。

「こんな鍵、かけたって無駄だけどな」

突っ立てる私の手をまた掴むとアパートを出る。
持ち出した荷物と私を車につっこむと、海瀬課長は自分のマンションに帰った。
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