君を忘れない~妄想の中の王子様

 驚いていると、彼は、脱いだシャツをふわりと広げ、優しく私に後ろから羽織らせた。
 
 その時初めて、私は、自分がびしょ濡れであることに気づいた。白いドレスが、透けていることにも……。

「あ、ありがとうございます。」

 恥ずかしくて、ますます頬が熱くなる。羽織っているシャツで、胸元をかくしながら、あわててお礼を言った。
 
「歩けるか?」

 私の言葉には答えず、彼は言った。

「はい。」

 返事をしたものの、立ち上がろうとすると砂浜に足をとられ、ふらついてしまった。
< 3 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop