君を忘れない~妄想の中の王子様
「俺さ、人と関わるのを、わざと避けて、ここに来たんだ。」

 おもむろに、レイは、語り始めた。
 私は、黙って聞いていた。

「昔、海で、仕事していて、事故で、何もかも、無くした。
 仲間も、たった一人の家族だった親父も。

 助けられなかった。……俺の、責任だ。

 それから、人と関わるのが、怖くなった。」


 長い指で、缶ビールの缶の縁を、なぞりながら、ゆっくりと語られる、重い過去。

 どんな言葉も、その事実の前では、無力に思えた。
 

「だけど、あんた見てたら、なんか、人と関わるのも、悪くない、と思えてきた。

 不思議だな、こんな、気持ちになるなんて。」





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