先生、解けない問題があるのですが。

*花菜side





「気を付け、礼!」

「「さよーな ((ガタッッ!!


帰りのHR。学級委員の号令と同時に、
私は挨拶もせずに、教室を飛び出す。


そして、廊下の掲示板に
張り出されたばかりの
‘‘ 第一学年 二学期 中間テスト 総合順位 上位五十名 ’’
と記された張り紙を見た。







ドキドキ…







5位 ・・・・城田 浩次 (2組)




ドキドキ……




4位 ・・・・村上 菜々子 (5組)



ドキドキ………



3位 ・・・・上野 唯 (4組)



ドキドキ…………






2位 ・・・・藤咲 花菜 (1組)

1位 ・・・・長瀬 諒也 (2組)









…………………………




「………また……2位……」








と、ため息をつく私、藤咲 花菜(フジサキ カナ) 。



黒髪セミロングストレートの、
身長157cm
体型は標準的ってとこで、
容姿はフツー。


家族構成は、父・母・私・弟の
マンション住まいで
これまた、家柄も平凡。


運動も人並みにできるし
それなりに料理も作れる
ごくごくごーく普通の高校一年生。






そんな私が唯一得意なもの。
それは………





勉強!!!!



そう!スタディ!!





なのですが………





「なーに言ってるの、花菜!充分な順位じゃない!」


後からやってきた、ブラウンショートがよく似合う、友達の真鍋 渚(マナベ ナギサ)が
落胆する私の肩をポンポンと叩く。





「私なんて、ここに名前すら載ったことないし!」



「そういう問題じゃ……ない。」





そう言いながら、私は
1位の横に書かれてある名前を見た。





また…




負けた……



私の地獄の一週間の幕開けだ。








すると、背後から女子達の黄色い声がとんでくる。


『すっごーい!!長瀬くんまたトップ?!』

『なんでもできちゃうなんて、イケメンすぎー!♡』






この、女子達のキャーキャー騒ぐ声だけでわかる。








…………………奴だ………










私は後ろを振り返り、その女子の塊の中心にいる人物を睨む。







『さっすが、完璧王子!』


『本当に完璧すぎてすごいね!長瀬くんって!』








………完璧王子だと??




ふん、バカバカしい!







「はは、そんなことないって!このくらい大したことないよ」



そう言ってその‘‘完璧王子’’は、
相変わらず女子達に向かって
営業用の芝居掛かった笑顔を振りまいている。







あんの、外ヅラ男……

目が笑ってないっつの!

あの、余裕そうに笑ってる顔がまた
イラつく。








すると、
ふいに、その‘‘完璧王子’’と目が合ってしまった。




ーーーーっ!!





私は目を丸くして、慌てて目を逸らす。


ヤバっ!
私ってば、ずっと長瀬のこと睨んでた?!



「渚、帰ろッ!」

「ちょっ、花菜?!」

渚の腕を無理やり掴んで
下駄箱に向かおうとした。







「藤咲」








が、

奴にそう呼ばれて、
反射的に反応してしまい、不本意にも足を止めてしまう。





しかし、後ろからは


「長瀬くん、誰その子〜」

「ウチらと一緒帰ろーよ」


と女子達の声。






ヤバイ………

この状況で捕まりたくはない。





私は止めていた足を再び踏み出した。







「おい、待てよ、藤咲!また俺に負けて怒ってんの?」






ーーーーー!!








‘‘また’’俺に負けて怒ってんの…??







………えぇ、えぇ。


そうですよ。




またアンタに順位抜かれたから、
悔しくて、ガン無視してんのよ!!






と、心の中で叫ぶ。






だけど、私は、聞こえないふりをして
歩く足を止めなかった。

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