Nostalgia【短編】
「どうして、覗き込んでいるの?」




小さな蛙の後ろで、波紋がマントみたいに見えた。

覗き込む向こう側には、影が二つ、私のいるあたりと彼のいるあたりに存在している。








「かえりたいからだよ」











水溜まりを覗き込んだまま彼はなんでもない風に訥々と話す。




「こっちの空気は息苦しい。
向こうもそんなに変わらないけど、したい事もないから帰る事を当面の目標にしてる」




世間話でもするような気軽さで、彼はそう言った。


彼の髪から、雫が一つ、落ちた。




















「ねぇ、お茶しない?」
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