過保護な副社長はナイショの恋人
唇を吸うように重なるキスに、私の胸の高鳴りは大きくなっていく。

副社長は私の両腕を掴むと、さらに深いキスをしてきた。呼吸が少し乱れてきて、たまらず顔をそらしてしまう。

「イヤだったなら、俺を引っ叩いてくれていい」

「恥ずかしかっただけです……。まさか、副社長とこんな……」

顔がまともに見られず、俯き加減の私の両頬を、副社長は優しく包み込んだ。

「副社長じゃない。今は、ひとりの男としているつもりなんだけどな」

ひとりの男として……。さっき副社長は、私のことを“総務の梶田さん”として会いたかったんじゃないと言っていた。

私は、ずっと“副社長”として見ていたけど……。

「一翔さん……」

名前を呼んだからといって、すぐに気持ちが切り替わるわけじゃない。

でも、呼ばずにはいられなくて、ふと副社長の名を口にした。

すると、副社長はもう一度、私の唇を唇で塞いだ。さっきより、ずっと濃厚なキスに、声が漏れてくる。

「ん……。ふ……」

かすかに流れるクラシックのBGMが聞こえないくらいに、私たちのキスの音が部屋中に響いていた……。
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